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2010年6月19日土曜日

Angel Beats! 第12話 感想

[EPISODE.12] Knockin’ on heaven’s door
 
突如として「影」が現れ、意志を持つ者たちををNPC化する動きがあった。SSSのメンバーはNPCになることに抗い、「影」たちと戦う。今回はその戦いの続きからだ。
 音無の考え方、つまり、神と戦うのではなく、「俺の人生もいいものだったんだな……」と思えるものを見つけ、ここから卒業していくべきだというものに賛成する者は少なからずいた。だが、「そんなの認められない! それじゃあこれまで俺たちは何のために戦ってきたんだ!」と、考えを受け入れられないものもいる。
 だが今のこの状況、することは両者とも同じだ。「影」と戦わなければならない。
 皆が音無の考えを、いや、自分の心の中でもいつしか気付き始めていたその考え方を認め、ここから去っていく決意をするようになると私は信じている。

 一方、ゆり。第一コンピュータ室からギルドへの道筋をたどっていた。途中、「影」に襲われ意識を奪われそうになるが、必死に抗った。まだ終われない、と。
「向こうの世界」つまり、ゆりが本来の制服を着て授業を受けている世界でゆりは必死に抵抗し、元の世界に戻ってこれた。奏の言っていた「壮絶な戦い」とは、こういうものだったのかもしれない。まさに、自分との戦いである。その際、音無、日向、奏、ついでに直井の思いに助けられた。彼女ひとりだけではNPC化してしまっていたのかもしれない。
奏が音無の背中からヒョコっと顔を出すシーンは、かわいかったなあ……///
 
そして、彼女はたどり着く。第二コンピュータ室。
 そこに一人の男が存在していた。
 彼もNPCのようだ。遠い昔にプログラミングされた存在。彼がAngel Playerを操り、「影」を生み出す条件は、「愛が生まれること」だと彼は言う。
 愛を知り消滅するものもいる。だが、神への抗いを続けるならば、愛を感じていても消えないだろう。だが、愛がこの世界に蔓延してしまっては、この世界は「永遠の楽園」となってしまう。それではいけない、とAngel Playerのプログラマーは考えた。そして、「影」のプログラミングをした。
 そのプログラマーの彼は、愛を知りこの世界から去っていってしまった女性を待ち続けたが、その時間が長すぎ、もう耐えられなくなる。そして自身をNPC化するプログラミングを組んでしまう。彼は、果たして報われたのだろうか? それは、分からない。
この場面で、夏目漱石の夢十夜の第一夜を彷彿とさせた。そこでは彼は最後に、百合(ゆりっぺ?)の花、つまり待ち続けていた女性と会うことができた。別に、この話はAngel Beats! にあまり関係無いと思うが、連想したので書いただけである。

 そして、ゆりの目の前に座る彼は言う。ここまで辿り着いた、ゆりには選ぶ権利があると。それこそ、このシステムを使ってこの世界の神になることもできる。永遠の楽園を作ることもできる。
「神さまのいない日曜日」でも、死者のための「永遠の楽園」の是非に関する議論が行われていた。墓守としてアイは、相反する考えを持った父と母の意志を引き継ぎ、それらを止揚した世界を作ろうと進む。そこまでが一巻だった。二巻ももう出てるみたいなので、読む必要があるが。
「永遠の楽園」といえば、博麗霊夢は「楽園の永遠の巫女」だったな。幻想郷も、永遠の楽園なんだろうか? それを脅かすものもあるのだろうか?

世界のシステムで、「夏空カナタ」も思い出した。塔弦島では、一人の女性が一生、ある部屋から出ない、という犠牲により島の存在が守られている。Angel Beats! で、一人の女性の犠牲といったらやはり、奏を思い出す。彼女は最終回でどうなるのだろうか? 彼女も、消える、いや、卒業できるのだろうか?

これまでに鑑賞した作品と比較検討することは大切だが、ちょっと脱線しすぎたので、ここで本題に戻る。

そして、ゆりの決断の時。「やっとこの世界を手に入れた! ついに神様にも勝ったんだ!」という思いを、以前の彼女なら持っただろう。だが、こんなに愛しい仲間を持った今の彼女には、そんな思いはない。
ゆりは、自身の感情が不思議だった。皆と仲良くなったのに、どこか変な感じ。
「そうだ、私の原動力は、妹たちを理不尽な死に追いやった神への復讐心だったんだ。なのに今は、その思いが妹たちだけのものではなくなってるんだ……」
 そう思った彼女に、妹たちは語りかける。「お姉ちゃん、もう苦しまなくていいよ。ありがとう」と。それは、実際に妹たちが言った言葉ではない。ゆりがそう思えるようになったのだ。神と最後まで戦い続けたからこそ、そう思えるようになったのである。

「妹達」といえば、レールガンでも「姉としての行動」が描かれていた。
 
そして彼女は、その部屋のコンピュータをすべて破壊する。「影」をなくし皆を救い、共にこの世界から卒業するためである。
 卒業した後、ゆりはどんな人生を送るのだろうか? エンディングにもあるように、そのときはもう、強い女の子ではない。普通の女の子の弱さで涙を流すと思う。
 
 オープニングは奏のことが歌われている。奏はこの世界に来た人々のために、一生懸命頑張り続けてきた。普通の学生生活を送らせる努力を続けてきた。普通の生活がどれだけ幸せかは、ゆりが「向こうの世界」で経験したことを見た私には、理解できた気がする。でも、「理解」はできたが、「実感」はできていない。普通の生活を幸せだと感じるのは、簡単ではない。

 そして最終回。
 ――卒業生代表、音無結弦
皆がこの世界から卒業するときが、ついにきた。
 その中に奏は含まれているのだろうか。彼女には、音無たちとともに卒業したいという思いもあるが、この世界を守り続けたいという思いもあるはずだ。その葛藤の末に彼女がする決断はどのようなものなのだろうか?

ここで、Angel Beats! というアニメの世界から、現実世界に戻ってみる。この現実世界はどのようにしてできたのか。時間、空間、そもそも「存在」を生み出したのは何なのか? それが分からないように、Angel Beats! の世界観も完全には分からない。アニメ、つまり創作物だからといって、完全に理解できるものではない。アニメの原作者もその世界がどのようにしてできたのかを、まだ考えているのかもしれない。そして、それを考えることは私たちにもできる。
理不尽な死を遂げた者のための世界。このような世界がなぜあるのか?
それを考えることは、私たちの生きる現実世界がなぜあるのか、を考えることにも結び付くかもしれない。

 Angel Beats! は、1クールという短さの中でとても多くの物を私に与えてくれた。もちろん、描ききれてない部分も多いのも事実だ。
 ゆりはどのようにして死んだのか? これまでにも、SSSのようなメンバーはいたのか? これからのこの世界はどうなるのか? 奏はいつからいるのか? 奏がAngel Playerと出会ったきっかけは?
 だが、アニメの中ですべてを示す必要はない。すべてが示されないことで、私たちが考えることができるからである。
 一般に、アニメが終わると、その主題に関する考察もやめてしまうことが多い。だが、その考察を続けてこそ意味がある。その主題とは、「生きる意味」である。
「Angel Beats! ってどんなアニメなの?」と聞かれたら私は、「理不尽な運命に抗い続けた果てに、何か大切なものを見つけた人々のお話だよ」と答えたい。

 だが、私の生きるこの現実世界で、理不尽な死を強いられた人は報われるのか? アニメでは報われていたが、現実ではどうなんだ? ということに関しては、考察をかなり続けているのに、分からない。
 でも、「アニメと現実は違う」の一言で済ませたくはない。だから、「理不尽な運命」にどう立ち向かうべきなのかについては、これからも考え続けていきたい。

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